神経芽腫のミトコンドリア異常と予後に関する後方視的観察研究へのご協力のお願い(2024年3月15日)

研究課題名 神経芽腫のミトコンドリア異常と予後に関する後方視的観察研究

1. 研究の対象   

国内の医療機関にて神経芽腫と診断され,診断時に受診機関にて「小児固形腫瘍観察研究および試料の研究利用に関する同意書」の「余剰検体を保存し研究に利用すること」に同意した患者さま,なお本研究は,日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group,以下JCCGという)組織内の委員会として設立された研究グループである神経芽腫委員会(Japan Neuroblastoma Study Group,以下JNBSGという)の付随研究として行います.

2. 研究目的・方法

ヒトはエネルギーを使って活動(歩く,考える,あるいは食事するなど)しています.これらの生命活動の源になるエネルギーは,細胞の中に含まれる「ミトコンドリア」と呼ばれる小器官で作られます.ミトコンドリアはエネルギーを作るだけでなく,機能不全となった異常な細胞を「アポトーシス」という方法で取り除く重要な役割も担っています.ところで,細胞はその小さな「核」の中に多くの遺伝子情報を「ゲノムDNA」として保管していますが,一部の遺伝子は,核ではなくミトコンドリアに含まれる約16 kbの小さな「ミトコンドリアDNA(以下,mtDNAと呼びます)」に保管されています.ミトコンドリアの異常は生活習慣病の発生と関連することが知られますが,私たちは,mtDNAの変異が成人がんで高頻度に認められ,がんの発生から悪性化(転移など)の促進に関与することを報告してきました.近年の技術革新によってヒト細胞内のほぼ全ての遺伝子DNA の配列を比較的容易に調べることができるようになってきました.しかし,神経芽腫のmtDNAに生じた遺伝子変異を調べる研究は,ほとんど行われていません.

本研究では,私たちが確立してきた遺伝子を解析する技術を活用して,神経芽腫症例(自然退縮症例,ならびに転移や再発などの予後不良症例を含む)のmtDNAに生じた遺伝子変異を調べます.必要な場合は,核内のゲノムDNAに含まれるミトコンドリアの働きに関わる遺伝子に生じた変異についても併せて調べます.このような方法で,神経芽腫の悪性化メカニズムとミトコンドリア異常の関わりを調べて新規診断法を開発すること,これを標的とした新規治療戦略を開発することを本研究の目的とします.

本研究は,JCCG-JNBSG が進める臨床試験の付随研究として,(1)分子病理学的な予後因子となるミトコンドリア関連遺伝子体細胞変異の網羅的同定,(2)治療標的となるミトコンドリア関連遺伝子体細胞変異の同定,(3)ミトコンドリア関連遺伝子体細胞変異と神経芽腫悪性化や自然退縮への関与の検討,の3 項目についてJCCG-JNBSG ならびに研究分担者との連携により千葉県がんセンター研究所で解析を行います.

 研究実施期間:千葉県がんセンター倫理審査委員会承認日より2027年3月31日(予定)

3. 研究に用いる試料・情報の種類

 試料:生検や手術,検査などで採取された腫瘍検体と血液を試料として用います.試料はJNBSG登録を行った際の登録番号によって管理されており,研究者は個人を特定する情報を知る事なしに試料を取り扱います.

 情報:がん組織のmtDNA変異データおよび発症年齢(月齢),検査時マーカー各種,病歴,治療歴,転帰等の情報を使用します.また,mtDNAに生じた異常(変異・コピー数変化)と核内ミトコンドリア関連遺伝子の体細胞変異およびコピー数異常との関連性を調べる目的で,過去に当研究施設で実施された全エクソンシークエンス解析データを使用します.個人を特定する情報は含みません.

4. 研究に関する情報公開

本研究から得られたデータの解析結果は国内外の学会や論文などで発表します.論文などで報告したデータは,バイオサイエンスデータベースなどの公開データベースに登録します.得られた有用なマーカー情報はJCCG-JNBSGに還元し,匿名化した研究用のデータとなります.データセンターへのデータの提供は,特定の関係者以外がアクセスできない状態で行います.これらの研究用データベースは,データを見ても個人が特定できないようになっています.一方,本研究から得られた神経芽腫細胞でのミトコンドリアの変異情報は,採取した時点の試料に存在していたものであり,現在のあなたが持っている可能性は低いものと考えられます.また,研究段階にある不確実な情報でもあります.したがって.これら情報を開示することは,提供者又は第三者に混乱を生じさせ,生命,身体,財産その他の権利利益を害する恐れがあります.よって,本研究から得られたデータは提供者に一切開示しません.

5. 研究組織

 巽 康年 (千葉県がんセンター研究所・上席研究員)

 高取 敦志(千葉県がんセンター研究所・室長)

 越川 信子(千葉県がんセンター研究所・主任上席研究員)

 下里 修(千葉県がんセンター研究所・室長)

 リン ジェイソン(千葉県がんセンター研究所・研究員) 

 竹永 啓三(千葉県がんセンター研究所・特任研究員)

 ほか:JCCG,JNBSG,JNBSG登録施設

6. お問い合わせ先

本研究に関するご質問等がありましたら,下記の連絡先までお問い合わせ下さい.ご希望があれば,他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で,研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい.また,試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので,下記の連絡方法でお申出ください.その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません.

研究内容についての照会先:

千葉県がんセンター研究所:巽 康年(研究代表者)

〒260-8717 千葉県千葉市中央区仁戸名町666-2 TEL 043-264-5431

研究への利用を拒否する場合の連絡先:試料は匿名化されているため,研究利用を拒否する場合は,まず診断時の医療機関や現在の主治医にその旨お申し出ください.あるいは上記問い合わせ先にご連絡ください.