神経芽腫マススクリーニング

がんのマススクリーニングは成人では一般的で広く行われており、がんが進行し治らない状態になってしまう前に早期発見し、治すことを目的とした検査です。
神経芽腫の発生部位は大部分が副腎組織や腹部および骨盤の神経組織から発生してきますが、これ以外の神経組織からも発生します。通常、診断時には体の別な部位に拡がってしまっていることが多く、進行した状態で発見されます。進行したものは非常に治りにくく救命できる確率も低くなってしまいます。一方、この腫瘍はいくつかの化学物質(バニルマンデル酸、ホモバニリン酸など)を尿中に排泄することが分かっており、診断や治療効果の判定に用いられています。このため腫瘍が進行する前にこの化学物質を検査して、早期発見ができないかと考え、年齢が6ヶ月の時にスクリーニングのための検査が行われました。

日本では1984年から全国的な事業として開始され、1998年までに2200万人以上の乳児が検査を受け、約2700例の神経芽腫が発見されました。日本に引き続き海外でもマススクリーニングが開始され、その効果について検討されました。これにより発見される症例は増加しましたが、目的である進行した症例を減少させる効果や死亡率を低下させることには結びつかないとする報告と効果が認められたとする報告があります。一方でマススクリーニングは神経芽腫の過剰診断とこれに伴う治療合併症の増加を招いているのではないかという指摘もあり、2003年に一旦休止となっています。海外で継続している国はありませんが、日本では現在、スクリーニングの年齢を18ヶ月に変更し、一部の地域で研究的に継続されていますが、その効果については結論がでていません。