神経芽腫の臨床病期

神経芽腫の予後には,発症時に腫瘍が体のどこまで広がっているか判断すること(臨床病期の決定)が重要であり,初発時の病期の決定はその後の治療方針を決定するために不可欠な判断です.

病期分類は,1971年に米国のエバンスらが提唱したエバンス分類から始まり,1980年代に作られたPOG(米国小児腫瘍研究グループ)分類などを基に1991年に国際病期分類(INSS)が提唱されました.わが国では長く日本小児外科学会分類が用いられてきましたが,最近国際標準として術後の病期分類INSS分類が用いられるようになり,近年さらに新しい国際神経芽腫リスクグループ病期(INRGSS)が制定され,治療前の画像診断で病期が決定されます.

●INRGSS分類

病期L1

病期L1は,IDRFという治療前画像診断で定義される主要な臓器・構造を巻き込んでいない局所性の腫瘍です.

病期L2

病期L2は,1項目以上の IDRFという治療前画像診断で定義される手術リスクを有する局所性腫瘍です.

病期M

病期Mは,腫瘍から離れた遠くに転移しているものです(病期MSは除く).

病期MS

病期MSは,18か月未満に発症し,転移は皮膚,肝,骨髄のいずれかに限られるものです.

参考

●INSS分類:術後の病期分類で,原発腫瘍の広がりや骨,骨髄などの転移巣の有無によって決定されます.

病期1:一つの領域に限られた腫瘍で、肉眼的に完全切除されているものです。

病期2:①病期2A;一つの領域に限られた腫瘍ですが、肉眼的に完全には切除されなかったもので、腫瘍に接していない同側リンパ節に組織学的に転移を認めないものです。②病期2B;一つの領域に限られた腫瘍で、肉眼的に完全に切除された場合でも完全に切除されなかった場合も含め、腫瘍に接していない同側リンパ節に転移を認めますが、反対側のリンパ節には組織学的に転移を認めないものです。

病期3:以下の3つの状況のうち、いずれか1つが認められた場合です。①腫瘍を完全に切除することが困難で、体の正中線を越えて反体側まで増大したもので、同側の局所リンパ節の転移は問いません.②腫瘍は一つの領域に限られているが体の反対側のリンパ節に転移を認める。③体の正中部位に発生した腫瘍で、体の両側に広がっており、手術で完全に切除できない、もしくは体の両側のリンパ節に転移を認める。

病期4:病期4は腫瘍から離れた遠くのリンパ節、骨、骨髄、肝、皮膚、他の臓器のいずれかに転移しているものです(病期4Sは除く)。

病期4S:病期4Sは1歳未満に発症し、原発は限局性の腫瘍(病期1、2Aまたは2Bで定義される)で、転移は皮膚、肝、骨髄のいずれかに限られるものです。乳児にみられ、遠隔転移があるにもかかわらず、治療がよく効き、なかには自然退縮がみられるなど、予後が良いという特徴を持っています。

コメント:

多くのがんでは臨床病期により治療方針が決定されますが,神経芽腫では臨床病期(INRGSS)だけでなく,年齢,生物学的予後因子(MYCN,病理分類)などを組み合わせて,3つのリスクに分類(リスク分類の項を参照)し,それぞれのリスクに応じた治療が行われます.