Q&A

  • Q1 風邪が長引いただけだと思っていたのですが、病院に連れてくるのが遅かったのでしょうか?
  • A1 お母さんや、ご家族の方がご自分を責める必要はありません。小児がんは進行が早く、気づいたときには転移を起こしているなど、進行した状態で見つかることが大部分です。神経芽腫も例外ではありません。もっと早く気づいていたら、こんなふうにならずにすんだのではないかという思いは、十分理解できますが、神経芽腫を代表とする小児がんは進行してはじめて症状が現れてくるということが特徴の一つです。どうぞ、ご自分を責めないでください。ここから一緒に考え、前に進んでゆくことが大切です。
  • Q2 神経芽腫って、どんな病気なのでしょうか?
  • A2 神経芽腫は子どものお腹の中や背骨の近くからでてくる小児がんの一種で、固形腫瘍の中では脳腫瘍に次いで2番目に多い小児がんです。乳幼児に多く、10歳以上に発症することは稀で、日本全体で年間に300人くらいの発症があると推定されています。胸のレントゲン写真などを撮ったときに、偶然に発見されたり、乳幼児健診などでも偶然に、お腹の硬い腫瘤として見つかることもあります。進行すると転移を起こし、発熱や、出血斑、不機嫌、疲れ易さ、手足の痛みのため歩き方がおかしくなったりすることがあります。治る可能性は十分ありますので、小児がんの専門医に遠慮なくご相談ください。
  • Q3 原因は何でしょうか? 兄弟に遺伝しますか?
  • A3 大人のがんも小児がんも、がんはすべて遺伝子の異常で起きてきます。遺伝子の異常だからといって必ずしも遺伝するわけではありません。稀に一部の小児がんで遺伝するがんがあること、生まれつきの特殊な体質のためにがんが生じやすい方がいること、は解っていますが、神経芽腫は特殊な事例を除いて、遺伝することはありません。遺伝子に異常を起こす原因は放射線、電磁波、発がん性の化学物質、ウイルス感染、食生活などの環境因子であると考えられています。このような環境からの影響は、子どもの場合、大人と比べて少ないと思われますので、環境因子に加えて、成長の過程で偶然に遺伝子に異常を起こしてくることが原因ではないかと考えられています。
  • Q4 治る可能性はありますか?
  • A4 治る可能性は十分あります。しかし、すべての神経芽腫の子どもが同じく治るわけではありません。神経芽腫のなかには何も治療をしなくても自然に治ってゆくものから、非常に強い治療が必要なものまで、さまざまものが含まれています。あなたのお子様の病気がどのような「治りやすさ」なのか、治療前に十分に検査をし、はっきりとさせておくことが一番重要です。治りやすさは発症した時の年齢、病気の進行度、腫瘍細胞の外観(顕微鏡で観察します)、腫瘍細胞の遺伝子の増幅、腫瘍細胞の染色体の数などで判ります。
  • Q5 副作用が心配ですが、どんな副作用がありますか?
  • A5 化学療法、放射線療法、手術療法のいずれの治療にも副作用はあります。一般に副作用は短期的なものと長期的なものに分けることができます。短期的なものは治療中から数週間以内、あるいは治療期間内に出現するもので、予防できるものや緊急に対処しなければならないものがあります。長期的なものは治療終了後、数年あるいはそれ以上過ぎてから出現するもので、成長の過程にある子どもの患者にとっては将来にわたる重要なことであると認識されています。各々の治療を受ける時には担当医から事前に十分な説明を受けてください。
  • Q6 普通の生活はできますか? 幼稚園や学校へは行けますか?
  • A6 普通の生活ができるかどうかということは、これから受ける、あるいは現在受けている治療の強さにより異なります。どのような強さの治療を行うかは、神経芽腫が発症したときのリスク分類によって決まります。一般的にリスクは低リスク、中間リスク、高リスクに分けられ、リスクが低いほど軽い治療ですみますし、副作用も少なく、短期間で通常の生活に戻ることができます。リスクが高ければ、それに応じて強い治療を長期間行わなければなりません。その分、副作用も強く、本人の体に対する影響も強くなることが予想されます。治療が終了すれば徐々に普通の生活に戻ることはできますが、合併症や再発に気をつけながら定期的に担当の先生にみていただくことが必要です。
  • Q7 いつ退院できますか?
  • A7 神経芽腫の治療法には手術、化学療法、放射線療法の3つの治療法があり、これらの治療法を組み合わせたり、あるいは単独で行うこともあります。手術だけの場合は手術後、身体が回復すればまもなく退院できます。しかし、これらの治療法のうち2つ以上を組み合わせて行わなければならない場合は、入院期間は2,3ヶ月から長い場合は、1年近くになることもあります。化学療法のスケジュールによっては、外来通院でできることもありますが、年齢など、体力的なことも関係してきますので担当の先生と十分に相談してください。
  • Q8 子どもにどう伝えればよいですか?
  • A8 子どもに自分の病気のことを伝える場合、その伝え方は子どもの年齢や理解度によって変えてゆく必要があります。神経芽腫の場合、発症年齢のピークは1歳前後ですので、この時点で伝えることはできません。もう少し自分のことがわかるような年齢になったら、これまでの治療のことや病気のことを伝えてください。 3,4歳以上になりますと、自我が発達してきますので何らかの納得のゆく説明が必要です。当然のことながら、病気のことを直接説明しても理解はできません。大切なことは、うそをつかないで、その子が一番知りたいことを伝えるようにすることです。たとえば、何時退院できるのか、週末は外泊できるのか、明日はどんな検査があるのかといったことです。そうすることにより子どもの不安を和らげることができます。病気に関しては、おなかの中に「わるいものがいるから、それをやっつける」といった、子どもに理解できることばで説明してください。病院によっては、チャイルドライフ・スペシャリストという、日本ではまだ新しい専門の職種の方がわかりやすく説明してくださることもあります。このような職種の方がいない場合でも、担当医や看護師が対応しますので、ご相談することをお勧めします。
  • Q9 治療方法はどうするのですか?
  • A9 神経芽腫の治療法は主に3つあります。手術療法と化学療法と放射線療法です。腫瘍が一つの限られた部位に留まっている場合は手術のみで終了することもありますし、手術後に弱い化学療法を追加することもあります。腫瘍の広がり具合や腫瘍の性格(悪性度)により、手術と化学療法を組み合わせたり、放射線療法を追加したりします。さらに、化学療法の特殊な場合として、造血細胞移植を併用した超大量化学療法があり、この治療を組み合わせて行うことも一般的です。手術は小児外科の専門医に行っていただくことをお勧めますし、化学療法は小児がん・血液の専門医に行っていただくことをお勧めします。また、治療はお子様の病状に応じて綿密に計画された臨床試験に参加して受けられることをお勧めします。
  • Q10 主治医から臨床試験に参加するよう勧められたのですが、どうしたらよいでしょうか?
  • A10 臨床試験と聞きますと、一般に研究材料にされるのではないかと思われる方も多いかと思います。しかし、小児がんの場合、特別なことではありません。神経芽腫をはじめとして、小児がんは発症数が非常に少ないので、各々の病院や医師の考えでばらばらな治療を行っていたのではよい治療はできません。欧米の先進国ではほとんどの小児がんの患者さんが臨床試験に参加して治療が行われています。臨床試験はこれまでの治療よりも、さらに良い治療を目指して、安全性を十分考え、治癒率を上げ、副作用を減らすことを目的に考えられています。臨床試験に参加することによって、お子様がよりよい治療を受けられるばかりでなく、将来の患者さんの治療に役立てることもできます。
  • Q11 医療費はどれくらいかかりますか?
  • A11 発症時18歳未満の小児がんは小児慢性特定疾患事業の対象疾患ですので、保険診療の自己負担分(3割)を公費で負担することができます(必要な場合は20歳まで継続可能)。所得や病状により自己負担金が異なりますので(自己負担金なし~最大11,500円)、病院の医療相談室やソーシャルワーカーによくご相談してください。診断後、できるだけ早く手続をすることで、タイムラグがなく適応を受けることができます。申請の窓口は地域の保健所です。これ以外にも特別児童扶養手当、障害児福祉手当、がんの子共を守る会療養援助制度などの社会支援の制度もありますので、ソーシャルワーカーにご相談してください。
  • Q12 兄弟がいるのですが、どのように対応したらよいですか?
  • A12 小さいお子さんの場合お母様が付き添いで一緒に入院することも多いと思います。この場合、家に残された兄弟姉妹は自分が見捨てられたような感情を持ってしまい、予想以上にストレスや負担が大きいことが分かっています。腹痛、チック、不登校などの心身症のような症状が現れたり、病気のお子さんやご両親への反発などが見られたりすることも多くあります。ある程度説明して状況を理解できるようでしたら、兄弟姉妹への説明も十分行い、意識して愛情をかけてやることが大切です。担当医と相談し、外泊の機会を多く作るようにすることや、携帯電話などでまめに連絡を取ることもよいと思います。